相続税の申告期限|孤独死で発覚が遅れても起点は「知った日」

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──孤独死などで、知らせが遅れたとき

相続税などの期限は、亡くなった日ではなく、相続人がその死を知った日から数えます。孤独死などで知らせが遅れても、知った日を起点にすれば、まだ時間がまるまる残っていることは少なくありません。慌てて諦める前に、まず「自分が知った日」を確かめることが大切です。

実際に、ある相続のご相談で、こんなことがありました。

長く実家と疎遠になっておられた、50代の息子さんからのご相談でした。ある日、警察から電話がかかってきます。アパートで一人暮らしをしていたお父様が、部屋で亡くなっているのが見つかった、と。あとで分かったことですが、亡くなってから、ひと月以上が経っていました。

葬儀やお部屋の片づけを終え、ようやく少し落ち着いたころ、息子さんは相続のことを調べ始めます。そこで目にしたのが、「相続税の申告は10ヶ月以内」という一文でした。

慌てて戸籍を取り寄せ、お父様が亡くなった日を確かめます。逆算すると、申告期限まで、もう半年を切っている。「こんなに短い間に、何もかも間に合うはずがない」。息子さんは、半ば諦めた様子で相談に来られました。

席に着くなり、こうおっしゃいました。「もう手遅れですよね。期限を過ぎたら、どうなるんでしょうか」と。

私がお伝えしたのは、「その10ヶ月は、お父様が亡くなった日からではなく、亡くなったことを知った日から数えます」ということでした。

◆ 期限は「亡くなった日」ではなく「知った日」から

相続税の申告と納税の期限は、正しくは「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月」と決められています。ふだんは、親が亡くなった日と、その死を知る日が同じなので、「亡くなった日から10ヶ月」と説明されます。多くの場合は、それで間違いありません。

けれど、孤独死などで発覚が遅れると、この二つの日がずれます。亡くなった日ではなく、相続人がその死を知った日が、起点になるのです。

具体的に見てみます。たとえばお父様が2月に亡くなっていて、相続人がそれを知ったのが半年後の8月だったとします。このとき10ヶ月の期限は、2月からではなく、8月を起点に数えます。翌年の6月ごろが期限になる、ということです。亡くなった日から逆算して「もう半年しかない」と青ざめていた人が、実際にはまだ10ヶ月をまるまる残していた、ということが起こります。

先ほどの息子さんも、まさにこれでした。亡くなった日からは半年を切っていましたが、警察から連絡を受けた日から数え直すと、期限まではまだ十分な時間が残っていた。諦めなくてよかったのです。

なお、相続人が複数いて、知った日が人によって違う場合は、その人ごとに期限を考えます。亡くなったときにそばにいた相続人と、後日になって連絡がついた相続人とで、申告期限がずれることもあります。

◆ ただし、「知った日」は、証明できるようにしておく

ここで一つ、現実的な注意があります。「知った日から10ヶ月」と言うためには、その「知った日」がいつだったかを、後から説明できるようにしておく必要があります。

孤独死の場合、多くは警察から連絡が入ります。その連絡を受けた日が、起点になります。ですので、電話があった日や、書面が届いた日を、メモや携帯の着信履歴、届いた封筒といった形で残しておいてください。

申告のとき、税務署に「自分が知ったのは、この日です」と示せる材料があると安心です。逆に、それを残していないと、せっかく期限内に動いているのに、起点の日付を裏づけられずに気をもむことになりかねません。亡くなった直後の慌ただしい時期ではありますが、連絡を受けた日付だけは、どこかに控えておくことをおすすめします。

◆ 戸籍の「死亡日」が、幅をもって書かれることがある

もう一つ、孤独死ならではの事情に触れておきます。

亡くなった日がはっきり特定できないと、戸籍の死亡日が「〇月〇日から〇日間」「〇月頃」といった、幅のある書き方になることがあります。このとき相続開始日は、その幅のいちばん最後の日として扱われます。「2月10日から10日間」なら2月20日、「2月頃」なら2月末日、という具合です。

ややこしいのは、これは先ほどの「知った日」とは、別の話だという点です。「知った日」は、申告の期限を数える起点。いっぽうこの「相続開始日」は、相続した財産を、いつの時点の価値で評価するか、という基準になる日付です。二つは役割が違います。

ここでは「死亡日が幅で書かれることがあり、その最終日が評価の基準になる」とだけ、頭の隅に置いていただければ十分です。実際の手続きでは、戸籍を見ながら一つずつ確かめていけば大丈夫です。

◆ 準確定申告4ヶ月・相続放棄3ヶ月も「知った日」から

「知った日から数える」という考え方は、相続税にかぎりません。

亡くなった親御さん自身の準確定申告──亡くなった年の所得を申告するもの──は、知った日の翌日から4ヶ月。相続を放棄するかどうかの判断は、知った日から3ヶ月。どれも、亡くなった日ではなく、相続人がその死を知った日が起点です。

ですので、連絡が遅れた相続では、これらの期限もそろって後ろにずれます。とはいえ、相続税の10ヶ月だけを見て安心していると、実はもっと早い4ヶ月や3ヶ月の期限が、知った日を起点にすでに動いている、ということもあります。一つずつ、「自分が知ったのはいつか」を起点に、数え直してみてください。

◆ まず「自分が知った日」を確かめる

もし、親御さんの死を、ずいぶん経ってから知らされたとしても、まずやっていただきたいことは、一つです。「自分がその死を知ったのは、いつだったか」を確かめること。

多くの場合、相続の期限は、亡くなった日ではなく、その知った日から動き始めています。亡くなった日から逆算して「もう間に合わない」と思い込んでいた方が、数え直してみると、まだ十分な時間が残っていた──ということは、決して珍しくありません。

疎遠だった親御さんの相続は、ただでさえ、心の整理も、手続きの手がかりも乏しいものです。そこへ「期限はとうに過ぎている」と思い込んでしまうと、何も手につかなくなります。けれど、慌てて諦めてしまう前に、もう一度だけ確かめてみてください。その死を知った日が、いつだったのかを。

そして、その日を起点に、できることから動き出してください。戸籍を取り、財産を調べ、必要なら専門家に相談する。スタートの日さえ正しく分かっていれば、残された時間の中で、落ち着いて進めていけます。

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