生命保険金に相続税はかかる?|非課税枠と、受け取る人で変わる扱い

目次

── 受け取った保険金は、遺産分割では分けません。それでも、相続税の対象になります。

亡くなった方が保険料を払っていた生命保険金は、相続税では課税の対象になります。ただし、500万円に法定相続人の数をかけた金額までは税金がかからない「非課税枠」があります。この枠を使えるかどうかは、受け取る人が相続人かどうかで変わります。

たとえば、こんなご相談があったとします。

ご相談者は、お父様を亡くされた50代の方。お父様が生前に契約していた生命保険から、死亡保険金として1,500万円を受け取りました。

「保険金は私が受取人に指定されていたもので、遺産分割とは別だと聞きました。これには相続税はかからないんですよね。」

受取人が決まっている保険金は、ほかの相続人と分け合う財産ではありません。その点は、おっしゃるとおりです。ただ、相続税の話になると、扱いは少し変わります。まずは順番に見ていきましょう。

◆ 生命保険金にも相続税はかかる?|「みなし相続財産」と呼ばれる理由

生命保険金は、契約で受取人に指定された人が、直接受け取るお金です。だから、ほかの相続人と分け合う遺産分割の対象にはなりません。この意味では「相続財産ではない」と言われます。

ところが、相続税では見方が変わります。亡くなった方が保険料を払っていた保険金は、その方が積み重ねてきたお金が、形を変えて家族に渡ったもの、と見ます。そのため、預金や不動産と並んで相続税のかかる財産となり、「みなし相続財産」と呼ばれます。

ここで大切なのは、誰が保険料を払っていたか、です。払っていた人が違えば、かかる税金の種類そのものが変わります。この点は、あとであらためて見ていきます。

◆ 生命保険金の「非課税枠」とは?|500万円 × 法定相続人の数の計算式

課税の対象になるとはいえ、その全額に税金がかかるわけではありません。遺された家族の暮らしを支えるお金だという趣旨から、一定額までは相続税がかからないしくみになっています。

その金額は、次の計算で決まります。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税枠

たとえば相続人が3人なら、1,500万円までは相続税がかかりません。

保険金が2,000万円・相続人が3人のとき

  • 税金がかからない金額:500万円 × 3人 = 1,500万円
  • 課税の対象になる金額:2,000万円 − 1,500万円 = 500万円

受け取った2,000万円のうち、相続税の対象になるのは、この500万円だけです。

なお、ここでいう「法定相続人の数」には、数え方の決まりがあります。相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして数に入れます。また、養子は、実の子がいる場合は1人まで、いない場合は2人までを数に入れます。数え方は『法定相続人とは?誰が相続人になるか|順位と法定相続分の基本』でも整理しています。

◆ 相続放棄した人・孫の注意点|保険金は受け取れても「非課税枠」は対象外

つまずきやすいのが、相続放棄をした人の扱いです。

保険金は受取人が自分のものとして受け取る財産なので、相続放棄をしても受け取ることはできます。ただし、非課税枠を使えるのは、相続人が受け取った保険金だけです。相続放棄をした人は、もう相続人ではありません。ですから、その人が受け取った保険金は非課税枠の対象にならず、受け取った額がそのまま課税されます。

まぎらわしいのは、先ほどの「500万円 × 法定相続人の数」を数えるときには、放棄をした人も人数に入る、という点です。非課税枠の総額そのものは変わらないのに、その枠を使えるのは放棄をしなかった相続人だけ——ここが取り違えやすいところです。

じつは、非課税枠が使えないのは、相続放棄をした人だけではありません。もともと相続人でない人も同じです。よくあるのが、孫を受取人に指定するケースです。子を飛び越して、かわいい孫にまとまったお金を遺したい——そうしたお気持ちからの指定でしょう。ただ、孫は相続人にあたらないことが多く、保険金は受け取れても非課税枠は使えません。受け取った額が、そのまま課税の対象になります。

しかも、孫が受け取る場合には、相続税そのものが2割増しになることもあります(2割加算)。よかれと思った指定が、かえって税の負担を重くしてしまうこともあります。

ただし、例外もあります。孫の親(亡くなった方の子)が先に亡くなっている場合、孫がその親に代わって相続人になります(代襲相続)。この場合の孫は相続人ですから、非課税枠を使えますし、2割加算の対象にもなりません。2割加算のしくみは、『相続税額の2割加算とは? 対象になる人・ならない人』でくわしく整理しています。

◆ 保険金の受取人が何人かいる場合|「非課税枠」をそれぞれの受取額で按分する

受取人が何人か指定されていて、保険金の合計が非課税枠を超えるときは、その枠を、それぞれが受け取った額の割合で分け合います。ひとりずつの非課税額は、次の式で決まります。

非課税枠 × その人の受取額 ÷ 全員の受取額の合計

(例)非課税枠が1,500万円で、Aさんが1,200万円・Bさんが800万円(合計2,000万円)を受け取ったとき

  • Aさん:1,500万円 × 1,200万円 ÷ 2,000万円 = 900万円
  • Bさん:1,500万円 × 800万円 ÷ 2,000万円 = 600万円

受け取った額から、この非課税額を引いた残りが課税の対象です。Aさんは300万円、Bさんは200万円が、相続税の対象になります。

◆ 保険金にかかる税金は相続税だけ?|契約のかたちで所得税・贈与税にもなる

最後に、もうひとつ。保険金にかかる税金は、いつも相続税とはかぎりません。誰が保険料を払い、誰が受け取るかによって、相続税・所得税・贈与税のどれになるかが変わります。

死亡保険金は、被保険者が亡くなったときに支払われます。亡くなったお父様を被保険者として、組み合わせを並べてみます。

保険料を払った人被保険者受取人かかる税金
お父様お父様お母様相続税
お母様お父様お母様所得税
お母様お父様お子さん贈与税

見分け方はシンプルです。保険料を払った人が、お父様自身なら相続税、受け取る人自身なら所得税、そのどちらとも違う人なら贈与税になります。非課税枠が使えるのは、いちばん上(相続税)の形だけです。

◆ 非課税枠を正しく活かすには?|受取人と保険証券を確認しておく

生命保険金は、遺された家族がこの先も困らないようにと、亡くなった方が生前から用意してくれた大切なお金です。だからこそ、その家族を守るために「非課税枠」という心強いしくみが設けられています。ただし、この非課税枠は、受け取る人が相続人かどうかで、使えるかどうかが決まります。孫を受取人にしていたり、相続放棄をしていたりすると、非課税枠が使えず、受け取った全額が課税の対象になってしまうので、注意が必要です。

また、誰が保険料を払い、誰が受け取るかによって、相続税ではなく所得税や贈与税になることもあります。手がかりは、お手元の保険証券にすべて書かれています。契約者・被保険者・受取人が誰になっているかを、一度たしかめておきましょう。それだけで、非課税枠を正しく活かせて、亡くなった方の想いも、そのまま安心として受け取れます。

出典:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4114.htm

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