相続税の相次相続控除とは?10年以内に相続が続いたときの控除額と要件

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── 短い間に相続が重なっても、2回分の相続税をまるごと負うとは限りません。

相続税の相次相続控除は、前の相続から10年以内に次の相続が起きたとき、2回目の相続税額から一定の金額を差し引ける制度です。前の相続で相続税を納めた方が亡くなり、その財産をまた受け継ぐとき、同じ財産に短い間で二度かかる相続税の負担をやわらげます。前の相続からの年数が短いほど、差し引ける金額は大きくなります。

たとえば、こんなご相談があったとします。

ご相談者は、お父様を亡くされたばかりの60代の方。数年前、お父様の兄にあたる伯父が亡くなり、その財産をお父様が受け継いで、相続税を納めていました。その伯父の相続から数年で、今度はお父様が亡くなり、ご相談者ときょうだいが財産を受け継ぐことになります。前の相続からまだ間もないうちに、また相続税の話が出てきて、ご相談者は割り切れない思いを抱きます。

「父が伯父から受け継いだときにも、相続税を納めたばかりなんです。その同じ財産に、また税がかかるものなんでしょうか」

――そう思われるのも、無理のないことです。相続税には、こうして短い間に相続が重なったときの負担をやわらげる、相次相続控除があります。ご相談者が使えるのか、いくら引けるのか、順番に見ていきます。

◆ 相次相続控除の基本|10年以内に相続が続いたときの負担をやわらげる制度

相次相続控除は、税額控除の一つです。財産の評価額を下げるのではなく、計算して出てきた相続税額そのものから直接差し引くので、控除した金額の分だけ、納める相続税が減ります。

伯父が亡くなった相続を一次相続、続いてお父様が亡くなった相続を二次相続と呼びます。一次相続でお父様が財産を受け継ぎ、相続税を納めている。その財産を、10年以内に起きた二次相続でお子さんが受け継ぐ。このとき、お父様が一次相続で納めた相続税をもとに、二次相続の相続税から一定の金額を引けるのが、相次相続控除です。

受けられるのは、次のすべてに当てはまる人です。

  • 二次相続で、亡くなった方(お父様)の相続人であること
  • 二次相続の前10年以内に起きた相続で、その亡くなった方(お父様)が財産を受け継いでいること
  • その財産について、亡くなった方(お父様)に相続税が課されていたこと

1つ目のとおり、控除を受けられるのは相続人に限られます。相続を放棄した人は、遺言で財産を受け取ったとしても、この控除は使えません。そもそも誰が相続人になるのかは、『法定相続人とは?誰が相続人になるか|順位と法定相続分の基本』で整理しています。

なお、名前の似た言葉に数次相続があります。こちらは、遺産分割が終わらないうちに次の相続が起きて、手続きが重なることを指す言葉で、相次相続控除とは別のことがらです。相次相続控除のほうは、前の相続で相続税を納め、分割も申告も済んだ方が、10年以内にまた亡くなったときの話です。数次相続については『数次相続とは?遺産分割の前に相続人が亡くなったときの手続きと税金』で取り上げています。

◆ 相次相続控除額の計算方法|経過年数と前の相続で納めた税額から求める

控除額の土台になるのは、お父様が一次相続で納めた相続税です。その金額を、前の相続から今回までに経った年数に応じて、1年ごとに1割ずつ減らしていきます。前の相続から1年なら1割、3年なら3割を減らす、という具合です。年数は、まる1年に満たない端数を切り捨てて数えます。たとえば3年半なら、3年として計算します。

年数が短いほど減り方は小さく、控除は大きく残ります。年数が経つほど控除は小さくなり、10年を過ぎると使えません。

控除額の目安 = 前の相続で納めた相続税 ×(10 − 経過年数)÷ 10

〈例〉お父様が一次相続で相続税500万円を納め、その3年後に亡くなり、その財産をご相談者が受け継いだ場合
 500万円 ×(10 − 3)÷ 10 = 350万円
 → 二次相続の相続税から、350万円を差し引けます

この350万円は、お父様が受け継いだ財産を、ご相談者がそっくりそのまま受け継いだときの金額です。実際には、これより小さくなることもあります。お父様が伯父から受け継いだ財産が、その後に目減りして、今回受け継ぐ財産のほうが少なくなっていれば、その分、控除も小さくなります。相続人が何人かいて財産を分け合うときも、控除は一人がまるごと使うのではなく、それぞれの取り分に応じて分け合います。上の350万円は、いちばん大きく使えたときの目安と考えておくと、実際の金額とずれても戸惑いません。

出典:国税庁「No.4168 相次相続控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm

◆ 相次相続控除が使えないケース|前回の相続税額がゼロだった場合の注意点

相次相続控除は、前の相続で亡くなった方が納めた相続税を、少しずつ減らしながら差し引く制度です。前の相続で相続税を納めていなければ、そこから引ける控除もありません。ここが見落とされやすいところです。

とくに気をつけたいのが、次のような形です。お父様が亡くなって配偶者のお母様が相続し(一次相続)、続いてお母様も亡くなってお子さんが相続する(二次相続)。この一次相続で配偶者の税額軽減を使い、お母様が相続税を納めずにすんでいると、二次相続では相次相続控除が使えません。もとになる一次相続の相続税が、そもそもゼロだからです。配偶者の税額軽減は、配偶者が受け継ぐ財産について大きく相続税を抑えられる制度で、これを使うと一次相続の税がゼロになることもあります。この配偶者の税額軽減については、『配偶者の税額軽減|二次相続まで考えないと子の税負担が増える理由』で取り上げています。

◆ 相次相続控除の手続き|前回の申告書の必要性と申告がいらないケース

相次相続控除を計算するには、お父様が一次相続でいくら相続税を納めたかを確認する必要があります。その金額は、前の相続のときに出した相続税の申告書に残っています。二次相続で控除を使うとき、これが手元にないと、当時いくら納めたかをたどるのに手間取ります。前の相続の申告書は、次の相続まで残しておくと安心です。

相続税の申告書は、税務署にもおよそ10年間は残っています。相次相続控除が使えるのも前の相続から10年の間ですから、その期間なら、税務署にも残っていることが多いはずです。ただ、確かめるには閲覧の手続きがいり、10年の区切りが近いと、すでに処分されて間に合わないこともあります。手元に控えがあれば、こうした手間はいりません。

控除を使ってその相続人の相続税がゼロになり、ほかに納める相続人もいなければ、相続税の申告は要りません。相次相続控除は、申告することを条件にはしていないためです。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が、税額ゼロでも申告して初めて受けられるのとは、ここが違います。ただ、控除を引いてもなお相続税が残るときは、申告が必要です。

続けて相続が起きるのは、ご家族にとって、つらい時期が重なるということでもあります。短い間に同じ財産へ二度、相続税がかかる。その重なりを少しでもやわらげるために、相次相続控除は置かれています。前の相続の申告書を残しておけば、次に相続があったとき、いくら控除できるかを、そこからすぐに確かめられます。

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