── 相続税は、全体を出してから、一人ずつに分けます。
相続税の申告と納税では、亡くなった方の財産を確定して評価し、税額を計算して申告書にまとめ、納めます。その期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月。なかでも分かりにくいのが、その税額の計算です。
たとえば、こんなご相談があったとします。ご相談者は、お父様を亡くされた50代の方。相続人はご相談者を含むごきょうだいで、財産のあらましも、だいたいの分け方も、見えてきたところです。あとは相続税の申告が控えていますが、税額がどれくらいになるのか、そこに向けて何をいつまでにすればいいのか、全体像がつかめずにいます。
「財産はだいたい分かったのですが、そこから税額がどう計算されるのか、何をどう進めればいいのかが、いまひとつつかめなくて」
――そう戸惑われるのも、無理のないことです。何をどの順に進め、税額はどう計算するのか。まずは、全体の流れから見ていきましょう。
◆ 申告と納税の全体像|何をどの順番で進めるか
相続税の申告と納税は、大きく次のような順で進みます。
- 相続税の申告が必要かを見極める(基礎控除を超えるかどうか)
- 手続きを自分でするか、頼むかを決める
- 財産を確定し、いくらかを評価する
- 遺産分割で、だれが何を受け継ぐかを決める
- 税額を計算して、申告書にまとめる
- 10か月以内に、申告し、納税する
見落とされやすいのが、納税にあてる現金です。相続税は、期限までに現金で一度に納めるのが原則です。財産に不動産が多いと、税額が出ても、それを納める現金が手元にない、ということが起こり得ます。分割して納める延納や、物で納める物納もありますが、どちらも例外で、原則は現金です。だからこそ、納税にあてる現金を用意できるかも、早めに見ておきたいところです。
出典:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
◆ 相続税の計算手順|全体の相続税額を出してから各相続人に割り振る
財産が固まり、遺産分割が決まると、そこから相続税を計算し、申告書にまとめます。まず、亡くなった方が遺した財産に対し、相続税の総額を出す。それを、実際に受け継いだ割合で相続人に割りふり、最後に、相続人ごとの事情に応じて加減する。この順で、一人ひとりが納める額を計算していきます。
この計算や、財産の評価、特例を使うかどうかの判断は、手のかかるところです。税理士に頼むこともできますし、財産の内容によっては、自分で進めることもできます。どちらにするかの目安は、『相続税の申告は自分でできる?税理士に頼むかの判断』で整理しています。
◆ 計算した税額の増減|相続人ごとの事情に応じた加算と税額控除
相続税を計算した最後の段階では、相続人ごとの事情に応じて、税額を増やしたり減らしたりする調整があります。当てはまるかどうかは、受け取る人や家族の状況で分かれるため、見落とすと、納める額が変わってきます。
税額が増えるのは、2割加算です。亡くなった方の配偶者・子ども・親以外の人が財産を受け取ると、税額が2割上乗せされます。誰が対象になるのか、孫はどう扱われるのかは、『相続税が2割高くなる人とは?2割加算の対象と、孫の扱い』で紹介しています。
反対に、税額を下げるもので、まず大きいのが配偶者の税額軽減です。配偶者が受け取った分には手厚い軽減があり、相続税が下がります。ただし、これで税額がゼロになる場合でも、申告は必要です。また、配偶者に大きく寄せると、最初の相続の税は軽くなる一方で、次にその配偶者が亡くなったとき(二次相続)に子の負担が増えることもあります。二次相続まで含めた配偶者の税額軽減は、『配偶者の税額軽減|二次相続まで考えないと子の税負担が増える理由』で説明しています。
そのほか、相続人の状況に応じた控除もあります。相続人に障害のある方がいるときの障害者控除、18歳未満の相続人がいるときの未成年者控除、そして前の相続から10年以内に次の相続が起きたときの相次相続控除です。条件や引ける額は、『相続税の障害者控除とは?対象者の条件・計算方法と申告の要否』『相続税の未成年者控除とは?18歳までの控除額の計算と申告の要否』『相続税の相次相続控除とは?10年以内に相続が続いたときの控除額と要件』で、それぞれ掘り下げています。
◆ 申告・納税後の手続き|税額の過不足に気づいたときの取り戻しと修正
申告と納税を終えても、あとから、納めた額に過不足が見つかることがあります。納めすぎていたと分かったときは、更正の請求という手続きで、払いすぎた分を取り戻せます。ただし、請求できる期間には区切りがあり、いつまでに、どんなときに認められるのかは、『更正の請求とは?払い過ぎた相続税を取り戻す手続きと期限』でまとめています。
反対に、あとから財産が見つかった、評価が足りなかったなどで、納めた税額が不足していたときは、修正申告をして、差額を納めます。このときは、本来の税額に加えて、加算税や延滞税といった上乗せがかかることもあります。自分で気づいて直すほか、税務署の調査で指摘され、修正申告に至ることもあります。
◆ 一つひとつの手続きを順番に進める
相続税の申告と納税は、一つの大きな山というより、いくつもの手続きの積み重ねです。財産を確かめ、評価し、遺産分割を固め、税額を計算して申告書にまとめる。何を、どの順にするのかが見えていれば、一つずつ手をつけていけます。
焦って片づけるものではありません。亡くなった方が遺されたものを確かめ、受け継ぎ、けじめをつけていく——申告と納税は、その締めくくりでもあります。
