名義預金とは?配偶者や子・孫の名義でも相続税がかかる理由

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── 口座の名義が家族でも、それだけで「その人のお金」とは限りません。

名義預金とは、口座の名義は配偶者や子・孫でも、その中身は亡くなった方のお金である預金のことです。相続税の調査でもっとも指摘が多く、見落としたまま申告すると、あとで思わぬ追徴を招きます。実質的な持ち主が亡くなった方であれば、その預金は相続税の対象になります。

たとえば、こんなケースです。

ご相談者は、お父様を亡くされた40代の方。相続人は、長年専業主婦だったお母様と、ご相談者を含むお子さんたち。お母様には、ご自身の名義でコツコツ貯めてきた預金が2,000万円ほどあります。家計をやりくりしながら少しずつ残してきた、いわゆる「へそくり」です。

相続税の申告を進めるなかで、税理士から「お母様名義のその預金も、お父様の財産に含める必要があるかもしれません」と言われ、ご相談者は戸惑いました。

「母の名義の口座なのに、父の相続税の対象になるんですか」

結論からいえば、名義がお母様でも、そのお金がもともとお父様のものであれば、お父様の財産として相続税の対象になり得ます。なぜそうなるのか、どこで線が引かれるのかを、順を追って見ていきます。

◆ 名義預金とは?——口座の名義ではなく「お金の出どころ」で決まる

相続税は、財産を「名義」で見るのではなく、「実質的に誰のものか」で見ます。口座の名義が家族のものでも、そこに入っているお金の出どころが亡くなった方であれば、その預金は亡くなった方の財産と考えます。これが名義預金です。

よく見かけるのは、次のような形です。ひとつは、祖父母が「いずれ孫に渡そう」と考え、孫名義の口座にコツコツ積み立てるケース。もうひとつは、収入のない奥様が、ご主人の給料をやりくりして、余った分を自分の名義で貯めているケースです。名義は孫や奥様でも、そのお金を出したのは祖父母やご主人です。

名義預金そのものは、悪いことでも違法なことでもありません。問題になるのは、それが亡くなった方の財産であるにもかかわらず、相続税の申告に含めないまま済ませてしまうこと。名義が家族だからと安心していると、この見落としが起きやすいのです。

◆ なぜ税務調査でいちばん問われるのか|申告漏れの中心は預貯金

名義預金が注目されるのは、相続税の申告漏れで最も多いのが預貯金だからです。国税庁の近年の調査でも、申告漏れが見つかった財産のうち、金額でいちばん大きいのは現金・預貯金でした。名義が家族のものだと申告から抜けやすく、そのぶん税務署も目を光らせています。

税務署は、亡くなった方の口座だけでなく、その配偶者や子・孫といった家族名義の口座についても、必要に応じて過去にさかのぼって入出金の履歴を確認できます。金融機関への照会は正当な理由があれば断れないため、家族名義の口座の動きも、実際にはかなり把握されていると考えておいたほうがよいでしょう。亡くなる前の残高と亡くなった時点の残高に大きな差があったり、家族名義の口座へまとまったお金が移されていたりすると、その理由が問われます。

指摘を受ければ、足りなかった相続税に加えて、加算税や延滞税がかかります。とくに、意図的に財産を隠していたと判断されると、重加算税という重いペナルティの対象になります。

なお、相続税には期限があり、その期限までに財産を正しく洗い出しておく必要があります。期限の考え方は『相続税の申告期限|孤独死で発覚が遅れても起点は「知った日」』で整理しています。

出典:国税庁「相続税の調査等の状況」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_chosa/pdf/sozoku_chosa.pdf

◆ 名義預金かどうかの分かれ目|カギは「贈与が成立していたか」

家族名義だからといって、その預金の全てが名義預金になるわけではありません。分かれ目は、そのお金が贈与によって、きちんと名義人自身のものになっていたかどうかです。

法律上、贈与は「あげます」「もらいます」というお互いの意思が合ってはじめて成立します。片方が黙って相手名義の口座に積み立てていただけでは、贈与は成立していません。もらう側が知らなければ、合意のしようがないからです。贈与が成立していれば、その預金は名義人のもの(名義預金ではない)。成立していなければ、亡くなった方の財産のままです。

税務署が名義預金かどうかを見るときは、おもに次の点を確認します。

名義預金かどうかを見分けるポイント

  • お金の出どころ(原資)は誰か。名義人本人の収入や、もともと持っていた財産から出ているか
  • 通帳・印鑑・キャッシュカードを誰が管理していたか。名義人の手元にあったか、亡くなった方が持っていたか
  • 名義人が口座の存在を知り、自分で自由に出し入れできる状態だったか

孫名義の口座があっても、孫がその存在を知らず、通帳も印鑑も祖父母が金庫にしまっていたのなら、孫が自由に使えるお金とはいえません。これは祖父母の財産と見られます。

配偶者名義の預金は、少し丁寧に考える必要があります。そのお金が配偶者自身のものだといえるなら、それはその人の財産です。たとえば、結婚前からの貯金、親から受け継いだ財産、パートなどで自分が得た収入。こうした「その人自身のお金」であれば、名義どおり配偶者のものと見ます。気をつけたいのは、亡くなった方のお金が、配偶者名義で貯まっている部分です。過去の収入や暮らしぶりから、どこまでが配偶者自身のお金で、どこからが亡くなった方に由来するかを見ていくことになります。

◆ 名義預金に時効はない|「何年も前だから大丈夫」は通じない

「もう何十年も前に移したお金だから、いまさら関係ないだろう」と思われるかもしれません。けれど、名義預金に時効という考え方はありません。

理由はシンプルです。贈与が成立していない名義預金は、ずっと亡くなった方の財産のままだからです。何年経とうと持ち主が変わったわけではないので、さかのぼれるだけさかのぼって、相続財産に含めることになります。

贈与税には時効があり、その期間は、贈与があった年の申告期限から原則6年(偽って申告を逃れたような悪質な場合は7年)です。ただ、これはあくまで「贈与が成立していた」場合の話です。名義預金はそもそも贈与が成立していないので、この時効は当てはまりません。「あげたつもり」でいても、双方の合意や、名義人が自由に使えるという実態がなければ、どれだけ時間が過ぎても、その預金は亡くなった方のものとして扱われます。古くからある家族名義の口座ほど、中身がもともと誰のお金なのかを、一度たしかめておくと安心です。

◆ 名義預金にしないために|生前贈与は「形」に残しておく

生前に本当に家族へ渡したいのであれば、贈与をきちんと形に残しておくことが大切です。ポイントは、あげる人ともらう人の間で、贈与の約束がきちんと交わされていること。そして、もらった人がそのお金を自分で管理し、自由に使える状態にしておくことです。

具体的には、贈与のたびに贈与契約書を作っておく、手渡しではなく振込にして記録を残す、通帳・印鑑・キャッシュカードは名義人本人が持つ、1年で110万円を超える贈与なら贈与税の申告をする、といった積み重ねが、贈与が成立していた証拠になります。

ただし、正しい生前贈与にも注意点があります。亡くなる前の一定期間内に受けた贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算するという決まりがあるためです。この期間は、かつては亡くなる前3年でしたが、いまは段階的に7年へと延ばされています。亡くなる直前にまとめて贈与しても、そのぶんは相続財産に戻されて計算されるので、早めに、少しずつ進めることが効いてきます。

なお、名義預金を本来の持ち主である亡くなった方の名義に戻すだけの名義変更には、贈与税はかかりません。もともと亡くなった方のお金なのですから、あげたことにはならないためです。

名義預金の多くは、財産を隠すためではなく、孫を思う気持ちや、長年家計を守ってきた積み重ねから生まれます。その思いが相続のときに家族の負担にならないよう、元気なうちに、家族名義のお金が「本当は誰のものか」を一度話しておく。この話し合いひとつで、いざというときの家族の戸惑いは、ぐっと小さくなります。

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