遺産分割は何から始める?進め方の手順と知っておきたい10か月の期限

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── 何から決めればいいのか、迷って当たり前です。

遺産分割とは、亡くなった方の財産を、誰がどう受け継ぐかを、残されたご家族で決めることです。初めての相続では、いま何が起きていて、何から考えればいいのか、見当もつかないものです。相続人の確認、遺言書、分け方、そして税金——出てくる話は多く見えても、一つずつほどいていけば、決して手に負えないものではありません。

たとえば、こんなご相談があったとします。ご相談者は、お父様を亡くされたばかりの50代の方。相続人は、お母様と、お子さん2人(長男・長女)で、ご相談者はその長女にあたります。まだ気持ちの整理もつかないうちに、まわりからは「早く分けないと」「申告があるはず」と急かされます。気ばかりが急いて、頭が追いつかない。

「何から手をつければいいのか、正直、さっぱりわからないんです」

――そうおっしゃるのも、無理のないことです。相続は一生に何度もあるものではありませんから、勝手がわからないのは、みなさん同じです。ただ、何を確かめ、何を決めるのかがわかっていれば、いちばん頭を悩ませる「どう分けるか」にも、落ち着いて向き合えます。まずは、確かめることから見ていきましょう。

◆ 遺産分割の手順|まず相続人や遺言・財産を確かめる

遺産分割の要は、どう分けるかを決めることです。ただ、いきなりそこに入る前に、確かめておきたいことがあります。全体を並べると、次のような流れです。

  • 相続人は誰かを確かめる
  • 遺言書があるかを確かめる
  • どんな財産が、いくらあるかを把握する
  • どう分けるかを決める(税金と、納得の両面から)
  • 分けたあと、分けられないときの税金を確かめる

この流れには、それぞれ理由があります。最初に相続人を確かめるのは、分ける当事者がはっきりしないと、話し合いそのものが始められないからです。あとから相続人が一人でも増えると、いったんまとまった話が白紙に戻りかねません。しかも、だれが相続人になるかは、相続税の基礎控除の額にも直に効いてきます。相続人の数え方や順位は、『法定相続人とは?誰が相続人になるか|順位と法定相続分の基本』で整理しています。

次に遺言書を確認するのは、有効な遺言書があれば、それが遺産分割の出発点になるからです。遺言書を見ないまま話し合いを進め、あとから出てきて振り出しに戻る——そうならないよう、話し合いの前に確かめておきます。ただ、遺言書があっても、相続人全員が納得すれば、それと違う形に分けることもできますし、配偶者やお子さんには、遺言でも奪えない最低限の取り分(遺留分)もあります。遺言と遺留分の関係は、『遺言と遺留分|偏った遺言でも相続人の最低限の取り分は守られる』で説明しています。

そして、分ける前に欠かせないのが、どんな財産が、いくらあるのかを把握しておくことです。とくに自宅などの不動産は、いくらと見るかがはっきりしないと、公平に分けることも、相続税を見積もることもできません。おおよその金額がつかめて、はじめて、どう分けるかの話し合いに入れます。評価そのものは分ける前の大きなテーマなので、ここでは深く立ち入りませんが、たとえば自宅の土地は、条件しだいで評価を大きく下げられます。その基礎は、『小規模宅地等の特例とは?自宅の土地は330㎡まで8割減|相続税ゼロでも申告は必要』で紹介しています。

◆ 遺産分割の判断|税金だけでなく、家族の納得も見て決める

相続人と遺言書を確かめたら、いよいよ、どう分けるかの話し合いです。ここで考えておきたいのが、「税金がいちばん軽くなる分け方」と、「家族が納得できる分け方」は、いつも一致するとは限らない、という点です。たとえば、同居していたお子さんが自宅を継いで小規模宅地等の特例を使うと、税は軽くなりやすい。けれど、その恩恵はそのお子さんに寄るため、ほかのごきょうだいが「自分たちには回ってこない」と感じ、折り合いがつかないこともあります。税の理屈では最適でも、気持ちのうえでは通らない——ここが難しいところです。

もう一つ、配偶者に大きく寄せると、最初の相続の税は軽くなりやすい一方で、次にその配偶者が亡くなったとき(二次相続)に、お子さんの負担が増えることもあります。目先の軽さだけで決めると、二回分を合わせたときに、かえって重くなることも起こり得ます。

税で有利な分け方と、納得のいく分け方に、どう折り合いをつけるかは、『遺産分割の決め方|「税金で得な分け方」と「納得できる分け方」はなぜ違うのか』で掘り下げています。配偶者に寄せるときに二次相続まで見ておく目安は、『配偶者の税額軽減|二次相続まで考えないと子の税負担が増える理由』で触れています。

◆ 遺産分割のやり直し|一度決まった内容を変更すると贈与税がかかる

遺産分割は、一度で決めきるつもりで臨みたいところです。人の気持ちは変わるもので、あとから「やっぱり不公平だった」と感じ、分け直したくなることもあるかもしれません。ただ、いったん有効にまとまった分割をやり直すと、税務の上では相続人同士の贈与とみなされ、相続税とは別に贈与税がかかることがあります。

「家族みんなが納得して分け直すだけ」のつもりが、思わぬ負担につながる——ここが見落とされやすいところです。一度納めた相続税は戻らず、そのうえで贈与税がかかることもあり、負担が二重になりかねません。だからこそ、最初の話し合いで、あとから気持ちが揺れないところまで、みんなが納得して決めておきたいのです。

やり直すと実際にどんな税金がかかるのかを知りたい方は、『遺産分割のやり直しはできる?全員が合意してもかかる贈与税と、課税されない例外』を読んでみてください。

◆ 未分割のまま迎える10か月の期限|特例が使えないことと数次相続のリスク

相続税の申告と納税には、亡くなったことを知った日の翌日から10か月という期限があります。この期限そのものは多くの方が意識していますが、見落とされやすいのは、その先です。期限までに分割がまとまっていないと、配偶者の税額軽減も、自宅などの土地を大きく減らせる小規模宅地等の特例も、その申告では使えません。あてにしていた税の軽減が受けられないまま、いったん満額を、現金で納めることになります。あとから分割が決まれば取り戻せる道もありますが、立て替える現金や、あらためての手続きは、避けられません。

しかも、話し合いが長びけば、その間に相続人のどなたかが亡くなって、その方の相続人まで加わり、関係者が増えることもあります(数次相続)。人が増えれば、合意はいっそう遠のきます。もめて期限を超えてしまうことで、税金と手間が増えていく——ここが、遺産分割全体を通して、気をつけたいところです。特例と未分割の関係は『小規模宅地等の特例、未分割だと使えない|不動産を相続したときの注意点』にまとめています。相続が重なったときの扱いは、『数次相続とは?遺産分割の前に相続人が亡くなったときの手続きと税金』で取り上げています。

出典:国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4208.htm

◆ ご家族で納得できる方向性を少しずつ話す

遺産分割に、どの家庭にも当てはまる正解はありません。相続人を確かめ、遺言書を見て、税金と納得の両面からどう分けるかを考える——やることは多く見えても、一つずつ進めていけます。そして、いちばん頭を悩ませる「どう分ければ家族が納得できるか」だけは、誰かが正解をくれるものではなく、ご家族で決めていくことになります。

答えを急ぐ必要はありません。それでも、ご家族がそろっているうちに、大きな方向だけでも話しておけると、あとがずいぶん楽になります。

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