法定相続人とは?誰が相続人になるか|順位と法定相続分の基本

目次

── 「配偶者が全部受け継ぐ」とは、限りません。

法定相続人とは、亡くなった方の財産を受け継ぐ人のことです。誰がそれにあたるかは、家族の気持ちや同居の有無ではなく、民法のルールで決まっています。ここを先に押さえておくと、そのあとの遺産分割も相続税の計算も、ぐっと見通しがよくなります。

相続した財産をどう分けるかで悩む前に、つまずきやすいのが「そもそも誰が相続人なのか」というところです。たとえば、こんなケースです。

長年連れ添ったご主人を亡くされた、70代の奥様。お子さんはなく、ご主人のご両親もすでに亡くなっていました。ご自宅も預貯金も、当然すべて自分が受け継ぐもの——そう思っていた矢先、四十九日を過ぎたころに、ご主人の弟から「自分にも権利があるはずだ」と連絡が入ります。

「夫の財産なのに、どうして義理の弟が出てくるのでしょうか」。奥様は戸惑いを隠せません。

結論からいえば、このケースではご主人の弟にも相続の権利があります。なぜそうなるのか、順を追って見ていきます。

◆ 法定相続人とは?「誰が財産を受け継ぐか」を決める民法のルール

相続が起きると、亡くなった方の財産は、法律で定められた相続人に引き継がれます。誰が相続人になれるか、その順番も、民法で決まっています。本人や家族の気持ちで、自由に増やしたり減らしたりできるものではありません。

相続人になれる人は、配偶者と、それ以外の血のつながったご家族に分けられます。配偶者は、ほかに誰がいても必ず相続人になります。血のつながったご家族のほうには順番があり、上の順位の人がひとりでもいれば、下の順位には権利が回ってきません。

なお、ここでいう配偶者は、婚姻届を出している法律上の夫や妻に限られます。長年連れ添っていても、内縁関係や事実婚の相手は相続人には含まれません。

出典:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm

◆ 法定相続人の順位一覧|配偶者は必ず相続人、あとは子・親・兄弟の順

配偶者と並んで相続人になる人は、次の順番で決まります。

  • 第1順位:子(すでに亡くなっていれば、その子である孫)
  • 第2順位:父母などの直系尊属(父母がいなければ祖父母)
  • 第3順位:兄弟姉妹(すでに亡くなっていれば、その子である甥・姪)

大切なのは、上の順番の人がいれば、下の順番の人は相続人にならないという点です。お子さんがいれば、親や兄弟姉妹が相続人になることはありません。お子さんも親もいないとき、はじめて兄弟姉妹に順番が回ってきます。

先ほどの例に戻ります。ご主人にはお子さんがなく、ご両親もいません。第1順位も第2順位もいないので、第3順位である兄弟姉妹——ご主人の弟が、奥様と並んで相続人になるのです。配偶者だからといって全部を受け継げるとは限らない。ここが最初のつまずきどころです。

◆ 法定相続分とは?配偶者の取り分は、誰と相続するかで変わる

相続人が決まると、次はその取り分です。民法は、話し合いがまとまらないときの基準として、それぞれの割合(法定相続分)を定めています。この割合は、配偶者が「誰と一緒に相続するか」で変わります。

  • 配偶者と子……配偶者 2分の1/子 2分の1
  • 配偶者と直系尊属(親)……配偶者 3分の2/親 3分の1
  • 配偶者と兄弟姉妹……配偶者 4分の3/兄弟姉妹 4分の1

※同じ順位の人が複数いるときは、その取り分をさらに人数で等しく分けます。配偶者がいないときは、その順位の人が全部を受け継ぎます。

先ほどのケースでは、奥様が4分の3、ご主人の弟が4分の1です。ただし、必ずこの割合で分けなければいけないわけではありません。相続人全員が納得すれば、違う分け方をしても構いません。実際の分け方をどう決めるかは、『遺産分割の決め方|「税金で得な分け方」と「納得できる分け方」はなぜ違うのか』で触れています。

◆ 代襲相続と相続放棄の仕組み|途中で相続人の顔ぶれが変わるケース

ここまで見てきた順番は、あくまで基本の形です。実際には、この順番どおりに相続人が決まらないこともあります。そのきっかけになるのが、代襲相続と相続放棄です。

代襲相続は、本来なら相続人になるはずのお子さんが、親より先に亡くなっているときに起こります。そのお子さんに子——つまりお孫さんがいれば、亡くなったお子さんが受け継ぐはずだった分を、お孫さんがそのまま引き継ぎます。お孫さんも亡くなっていれば、そのお子さんへと引き継がれていきます。兄弟姉妹が先に亡くなっているときも同じで、その子である甥・姪が代わりに相続します。ただし、こちらは甥・姪までの一代かぎり。その子までは引き継がれません。

一方の相続放棄は、家庭裁判所で手続きをして相続を辞退することです。放棄した人は、はじめから相続人でなかったものとして扱われます。借金などマイナスの財産を引き継ぎたくない、相続そのものに関わりたくない——理由はさまざまですが、放棄すると、その人のお子さんへの代襲も起きません。誰かが放棄すると、同じ順位の別の人や、次の順位の人へと権利が移っていくことがあります。

◆ 相続税の基礎控除額を左右する「法定相続人の数」の正しい数え方

ここまでは「誰が財産を継ぐか」という民法の話でした。相続税では、この「法定相続人」がもう一つ別の顔を持ちます。相続税には、これを超えなければ税金がかからないという基礎控除があり、その金額が法定相続人の数で決まるのです。

  • 基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

相続人がひとり増えれば、非課税の枠が600万円広がります。生命保険金や死亡退職金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)も、同じ数で決まります。だからこそ、人数を正しく数えることが大切です。

たとえば、法定相続人が2人なら4,200万円、3人なら4,800万円、4人なら5,400万円。ひとり増えるごとに、非課税の枠が600万円ずつ広がっていきます。

気をつけたいのは、この人数の数え方が、民法と相続税とで違うことがある点です。たとえば相続を放棄した人は、民法では相続人から外れますが、基礎控除の計算では人数に数えます。養子を迎えているご家庭にも、注意があります。税の計算に含められる養子の数には上限があり、実子がいれば1人、いなければ2人までとされています。同じ「法定相続人」でも、場面によって数え方が変わるのです。

出典:国税庁「No.4152 相続税の計算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

出典:国税庁「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4170.htm

◆ 法定相続分は絶対ではない|遺言書があれば分け方は自由に変えられる

ここまで、誰が相続人になり、どんな割合になるかを見てきました。ただ、この割合は絶対のものではありません。相続人全員が納得すれば、話し合い(遺産分割協議)で自由に分け方を決められますし、亡くなった方が遺言を残していれば、法定相続分とは違う配分にすることもできます。

先ほどの例も、もしご主人が「妻にすべてを遺す」という遺言を残していたら、話はずいぶん変わっていました。というのも、兄弟姉妹には、最低限の取り分を保障する遺留分がありません。遺言さえあれば、ご主人の弟に財産が渡らないようにすることもできたのです。

一方、配偶者やお子さん、親には遺留分があります。ただし、これは自動的に守られるものではありません。遺言で取り分を減らされた人が、自分から請求してはじめて取り戻せるものです。裏を返せば、請求する人がいなければ、遺言のとおりに渡すことができます。

誰が相続人になるかは、家族の情ではなく、民法の順番で決まります。だからこそ、まずは「わが家の場合、誰が相続人になるのか」を、一度落ち着いて確かめておきたいところです。顔ぶれと割合がはっきりしているだけで、あとから思わぬ人が現れて慌てることも、打てたはずの手を逃すことも、ずいぶん減らせます。

そのうえで、残されたご家族がこの先どう暮らしていくのか、誰に何を継いでほしいのか。数字だけでは割り切れないその部分まで含めて、家族で一度、話し合っておけたら。それがきっと、大切な人たちが次へ進むための、いちばんの備えになります。

相続人がはっきりしたら、次は遺言や財産を確かめ、どう分けるかへと進みます。その全体の流れは、『遺産分割は何から始める?進め方の手順と知っておきたい10か月の期限』で整理しています。

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